研究概要 |
自己骨髄細胞の心筋内投与によって、虚血心筋の血流や心機能が改善することが報告されている。しかしながら、その機序の詳細は不明である。我々は、移植された骨髄細胞から分泌される因子が血管新生や心機能改善に寄与すると考え、この仮説を証明することを本研究の目的とした。 Wistarラットから単離した骨髄単核球細胞(BMC)は、通常酸素(20%O_2)および低酸素(1%O_2)条件下で培養した。24時間培養後の上清を以下の実験に用いた。なお、BMCを培養していない培地をcontrolとした。同ラットより成獣心筋細胞(CMC)を単離し、先に採取した各培養上清を添加し培養を行った。apoptosisに陥ったCMCは、control群で有意に高値であった(培養72時間後)。また、CMCのCell lengthやCa^<2+> transientの測定を行うと、control群に比べて通常酸素、低酸素群では収縮能が良好であった(培養48時間後)。さらに、培養上清中にはVEGF,IL-1β,bFGFなど様々な因子が分泌されており、いくつかの因子は低酸素培養による有意な上昇が認められた。左前下行枝(LAD)結紮によりラット心筋梗塞モデルを作製した直後に各培養上清20μlを左室自由壁5カ所に、結紮2、4、6日後には0.5mlを腹腔内に投与した。経胸壁心エコーによる心機能の評価では、通常酸素および低酸素群の左室収縮率はcontrol群に比べて有意に増加していた(結紮7日後)。さらに、梗塞心の組織学的解析では、control群と比較して通常酸素および低酸素群における毛細血管密度の増加と線維化面積の減少が認められた(結紮28日後)。 以上の結果から、骨髄単核球細胞から分泌される様々な因子が血管新生を促進すると共に、心筋細胞に直接作用することによって低下した心機能の改善に寄与すると考えられた。
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