研究概要 |
ヒト肺癌同所性移植モデルはSCIDマウスを用いて,原発巣を形成し,さらに縦隔リンパ節への転移を起こすものを作成することに成功している。同様の同所性移植モデルの作成は大腸癌には報告があるものの.それ以外の臓器の癌にはほとんどない。そこで,ヒト食道癌細胞株であるYES-3とヒト甲状腺未分化癌細胞株であるACT-1を用いて,SCIDマウスでヒト食道癌細胞モデルと甲状腺未分化癌細胞モデルを作成した。方法はSCIDマウスをエーテル麻酔下に仰臥位に固定する。食道の場合は上腹部に横切開を約1.5cm加え,開腹し,食道を露出,さらにあらかじめ調製しておいた細胞懸濁液10μmを30G針で食道筋層内に注入した後・閉腹する。甲状腺の場合は頸部に横切開を加え,気管を露出,甲状腺を確認し,細胞懸濁液10μmlを30G針で甲状腺内に注入した後,閉創する。これまでの実験で,食道癌は注入4週後に食道に腫瘍形成し,6週で縦隔リンパ節へmicro-metastasesを形成,8週でmacro-metastasesを形成することがわかった。また,甲状腺癌は注入6週で甲状腺内に腫瘍形成し,8週で縦隔リンパ節転移を起こすことがわかった。食道癌,甲状腺癌それぞれでヒトの癌のリンパ節転移をマウスで再現することができたので,現在,これらの追試を行っており,腫瘍形成から転移を起こす経過の正確なタイムコースができたので,癌関連の雑誌への投稿準備中である。 また,抗癌剤投与を行い,投与中耐性獲得までの間で腫瘍内の抗癌剤関連遺伝子変化の検討であるが,同所移植モデルの前に皮下モデルで行うこととし,YES-3細胞についてSCIDマウス皮下に腫瘍を作り,5-FUおよびCDDP投与を行った。抗癌剤投与前,効果発現時,耐性獲得時それぞれの腫瘍組織を採取。遺伝子の絞り込みのため,DNA arrayにて検索した。PI3K/Akt signaling pathwayが耐性獲得に関係していることが示唆された。さらに上記の同所移植モデルを用いて抗癌剤投与を行い,同所性移植モデルにおける抗癌剤関連遺伝子変化に関する研究を行う予定である。
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