研究概要 |
本年度の実験では、まず、気管に対する手術モデルの作製と、KGFの投与方法の検討を行った。 今回の手術もモデルとして、ラット気管軟骨輪を径1〜2mmのパンチでマーキングした後、正確にその直径の長さにわたって気管軟骨を切除するモデルの作製に着手した。欠損をあまり大きくすると術後に出血による窒息や欠損部が周囲組織より圧迫されて狭窄することが判明したため、欠損の長さを1mmとする予定としている。1mmであればほとんど気管の変形も無く、手術操作による出血も軽微であった。観察期間については、術後3,5,7,14,28日後の気管軟骨を摘出しその創傷治癒の経過を観察したところ7日目には欠損した軟骨の距離の半分以上まで軟骨が伸長していると思われる所見が得られている。さらに組織的にそれが軟骨細胞であることの確認をすすめ、KGF投与時の軟骨再生の程度を観察する最適な術後日数を決定する予定である。現在7日目に術後急性期の創傷治癒過程、21日目に治癒後の瘢痕形成等の観察を行うモデルにすることを前提として準備している。 KGFの投与方法についてはゲル状のシートを5mm角に作成し、一枚当たり25,50ngのKGF蛋白を吸収させて投与することに決定した。使用するゲルの種類を現在複数のゲルを入手、もしくは作成し、KGFの吸収及び徐放スピードに関して検討し、術後観察期間が決まった後、最適な徐放スピードを持つゲルを決定する予定である。なお、実際の手術部位にゲルシートを貼付し、閉創した後にゲルの使用による止血不良や気漏等が無いことも確認できている。 軟骨の新生を正確に測定する方法としてメチルグリーン染色による異染性の違いにより区別する方法を検討した。産生されてから器質化した軟骨基質は高い異染性を示すが、新生されたばかりの軟骨基質は異染性が低いため、術後長時間経過した後も切除断端であった軟骨組織と新生された軟骨組織の境界が明らかであることを確認した。
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