【目的および方法】気管・気管支形成術や、気道損傷において、軟骨組織の創傷治癒は手術の成否を決するのみならず、術後患者のQOLに大きく影響する。今回我々は、ラットの気管縦切開モデルを用い、特に気管軟骨における創傷治癒過程に注目し、その創傷治癒部の組織学的変化を週令の異なるグループのラットについて観察した。また、呼吸器の分化に大きく関与しているとされるKeratinocyte growth factor(KGF)が気管軟骨に強く発現していることから、同モデルにおけるKGF関連分子の発現を検討し、またin vitroではラット鼻中隔軟骨細胞へのKGF投与による分化、増殖の変化の観察を行った。これらの実験によりKGF関連分子を用いた気管・気管支軟骨の創傷治癒のコントロールの可能性について検討する。 【結果】(1)軟骨の欠損部は何骨細胞の増殖により閉鎖された。(2)術前の軟骨細胞および術後の分化増殖中の軟骨細胞においてKGF受容体(KGFR)の発現を認めた。(3)初代培養軟骨細胞へのKGF投与により、その増殖は促進されたが、軟骨の間質産生能は抑制された。【結論】KGFが軟骨細胞の再生に大きく関与していることが考えられた。KGF及びその関連分子を用いて気管・気管支軟骨の再生を制御し、創傷治癒をコントロールできる可能性が示唆され、さらにはバイオ人工気管・気管支等に応用できると考えられた。
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