研究概要 |
【目的】Keratinocyte growth factor(KGF)は2型肺胞上皮細胞に対する増殖因子であり細胞の増殖、あるいは1型上皮細胞への分化を誘導、促進するとされ、種々の肺傷害モデルでKGFが肺胞上皮の保護、修復、再生に関与したとの報告がある。そこでマウス肺気腫モデルを作成しKGF発現プラスミドを導入し組織学的評価、肺気腫病態の進行抑制、また改善の有無を検討した。【方法】オス8-9週令BALB/cに経気道的にエラスターゼを投与し肺気腫モデルを作成した。同時にKGF発現プラスミドを下腿筋に注入しエレクトロポレーション法による遺伝子導入を施行した。コントロール群にはKGF非発現プラスミドを使用し同様の処置を行った。導入後、HE染色、免疫組織化学染色、in situ hybridizationによる評価を行った。【結果】KGFプラスミド導入群ではコントロール群と比較し導入後4,7日目で血清KGF高値を示し、肺組織でもKGF、KGFreceptor(KGFR)、増殖マーカー(PCNA)の高発現を認めた。またPCNA発現陽性細胞においてサーファクタント蛋白やKGFRが発現しており2型肺胞上皮細胞の増殖、ならびにKGFへの感受性亢進が示唆された。肺組織でのin situ hybridizationでは導入後2-3日目をピークにKGFmRNAの高発現を認めた。しかしHE染色での形態変化や動脈血ガス分析での変化は認めなかった。【結語】エレクトロポレーション法によるKGF発現プラスミドの導入により肺気腫モデル肺においてKGFおよびKGFRの発現が増強し肺胞上皮細胞増殖を促進した。
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