我々は生体吸収性ポリマーを足場(Scaffold)として、自己骨髄細胞をそれらに播種培養することで生体内で目的組織を作製するTissue Engineeringの手法を用いた再生血管の研究を行っている。動物実験にはビーグル犬を用い、全身麻酔のもと骨髄細胞を採取し、密度勾配法により骨髄単核球細胞を分離、それをポリカプロノラクトンとポリ乳酸からなるスポンジ状共重合体ポリマーをポリグリコール酸で補強したハイブリッドポリマー上に播種した。インキュベータ内にて自己血清に浸した状態1-2時間保管する。その後、細胞を播種したポリマーを右開胸下に実験動物の下大静脈に移植する。1、3、6ケ月、12ケ月以上まで観察した後、採取した再生組織の成熟度およびその経時的変化、生力学的変化につき検討した。 遠隔期において狭窄や腹水の貯留の認められないグラフトに関しては、経時的に血管の強度が増し、壁厚も減弱し約1年で正常静脈とほぼ同等の組織像、生力学的特徴を示した。則ち、1年かけて、体内にて再生血管が作成されるということになる。また、本材質を使用した場合においては、遠隔期での石灰化は認められず、良好な組織形態を示した。炎症の変化としては、免疫組織学的検索に於いてCD4、MCP-1の陽性細胞は経時的に減少し、CD4のmRNAにおいてもその傾向が認められた。
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