19年度は前年度で確認した基礎的研究の結果を踏まえてin vivoでの実験を行った。心筋梗塞急性期の骨髄細胞動員を観察するために野生型ラットにGFP発現ラットの骨髄を骨髄内骨髄移植し、4週間後に心筋梗塞を作成した。次に心筋梗塞慢性期の骨髄細胞動員を観察するために野生型ラットに心筋梗塞を作成し、梗塞後2、6、10、14週後にGFP発現ラットの骨髄を骨髄内骨髄移植した。骨髄細胞動員は心筋梗塞3時間後から始まり、72時間後にピークを認めた。その後は心筋梗塞後8週まで動員細胞は漸減し、16週後まで増減無く平衡状態を維持した。動員された細胞の表現型は、梗塞後6時間の時点では抗CD31抗体、抗CD45抗体および抗Vimentin抗体陽性の細胞が多数存在していたが、梗塞後24時間後には一部に抗CD31抗体や抗CD45抗体陽性細胞が存在するものの、大部分は抗Vimentin抗体のみが陽性の細胞に変化していた。いずれの時点でもα-アクチニン陽性の骨髄細胞はみられなかった。また心筋梗塞作製直後から5日間granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)を投与した群と投与しなかった群との比較では、骨髄からの動員細胞数と動員細胞の表現型に大きな差はなく、1カ月後の心臓超音波の心機能評価でも有意な改善を認めることはできなかった。心筋梗塞後の骨髄細胞の動員は3日目以降から8週後まで漸減し、それ以後は動員されにくいことが判明した。この期間に骨髄細胞の動員数の漸減を回避できる手段を確立させる事が効率的な再生治療になりうる可能性があることを示唆した。これらの結果をまとめて報告予定である。
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