研究概要 |
がん間質に浸潤してくる単球/マクロファージや線維芽細胞はがんの悪性度進展に深く関与していることが,近年注目を集めている。本研究では炎症性サイトカインに応答する腫瘍の増大やがん血管新生におけるマクロファージの関わりを検討した。 炎症性サイトカインIL-1・を高生産する肺癌細胞LLC/IL-1・は腫瘍増殖連度や新生血管密度さらにマクロファージの浸潤率においてIL-I、非生産肺癌細胞LLC/neoに較べ著明に高かった。背部皮下腫瘍モデル実験系でLLC/IL-1・瘍はLLC/neo腫瘍に較べ明らかに血管新生の誘導活性が高かった。マクロファージをLLC/IL-1・と共培養すると,血管新生因子(VEGFやIL-8)やMMP9さらにケモカインMCP-1の生産がLLC/neoとの共培養に比べ著明に上昇していた。外来性IL-1・やがんが生産するIL-1・によってIL-8, VEGF, MCP-1またMMP9が上昇するメカニズムとしては転写因子NF-kBやAP-1(Jun/Fos)の活性化が関与していた。炎症とがんの進展は密接に関連していることがよく知られているが,本結果は炎症によるがん血管新生誘導とがん増大への関与にマクロファージの活性化が重要な役割を担っていることを示した。今後,がん間質の炎症応答を標的とするがん治療戦略の一つとなる可能性がある。
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