研究課題
細胞運動を抑制するマウスモノクローナル抗体を作製し、その遺伝子クローニングすることで、Aminopeptidase N(APN)を同定した。APNはメタロプロテアーゼに属し、ペプチドの加水分解の最終段階で重要な役割を果たしている。現在までに我々は、APNが細胞外マトリックスへの浸潤と基底膜の破壊をきたし、癌細胞運動および血管新生の過程で、癌の転移形成、進展に関わっていることを明らかにした。更に、APN強発現の肺癌・膵癌・大腸癌患者は予後不良となることを明らかにした。以上のことからAPNを抑制することは、癌患者の予後を改善できる可能性があると考えた。マウス抗体では臨床応用すると様々な副作用を生じるため、数種のヒト型モノクローナル抗APN抗体を作製した。その中でもヒト型MT95-4抗体とヒト型MT19・12抗体は強いAPN活性抑制効果を示した。MT95-4抗体をヌードマウス血行転移モデルで投与し、肺転移を著明に抑制できることを明らかにした。更にヌードマウスの左肺に、APN強発現の肺癌細胞株を同所移植することで、縦隔リンパ節転移を生じる実験モデルを作製し、抗APN抗体のMT95-4抗体を投与すると、縦隔リンパ節転移は著明に抑制された。他の抗APN抗体は、APN活性抑制効果著明ではなかった。その効果の相違は、修飾糖鎖構造にあることが判明している。APNの転写活性部位および作用機序は未だ不明な点が残っているが、少なくとも血管新生に関してはこの糖鎖構造の役割は大きいと考えられる。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 図書 (1件)
Cancer Res 67
ページ: 1744-1749
J Natl Cancer Inst. 99
ページ: 858-867
J Thorac Oncol 2
ページ: 546-552