研究概要 |
本研究の目的は、1)脳神経外科手術ナビゲーションシステムに、術前に計測されたMRIの3次元解剖学的情報のみならず、脳代謝や脳機能マッピングの3次元マルチモダル情報を加えることにより、脳神経外科領域における本システムの有用性を向上させることと、2)手術ナビゲーションの欠点である術中brain shiftへの対応法を開発することである。 本研究においては、脳磁図による言語野マッピング法が確立されたことが大きな成果であった。脳磁図の言語野解析結果を従来のf-MRIによる結果と比較すると、いずれの方法でも、運動性言語野(Broca野)を同定することは可能であるが、前者では、Broca野以外の言語関連領域を同定でき、しかもこれら賦活領域の時間的・空間的関連性を動画で表示することが可能であり、個々の言語野解析にはより有用であった。また脳代謝や脳機能マッピングの3次元情報の他に、錐体路線維の3次元情報である拡散テンソル画像(DTI)データを手術ナビゲーションシステムに導入することぶ可能になった。さらに、超音波(ultrasound,US)画像を手術ナビゲーションシステムに導入し、モニター画面上で術前MRI画像と超音波画像を重ね合わせることにより、術中のbrain shiftをリアルタイムに計測することも可能になった。 これらの技術の用いて左前頭葉Broca野近傍の脳腫瘍10症例の手術を行った。言語野および錐体路の3次元情報を手術ナビゲーションシステムの画面上に表示し、さらにUS画像によるリアルタイムモニタリングを行いながら脳腫瘍の摘出術を行った。全例でBroca野を温存した腫瘍摘出が行われ、術後の言語機能評価において言語機能の悪化を示す症例は認めなかった。脳機能・代謝画像と実時間超音波計測を統合した画像誘導手術法の開発は、安全で確実な脳腫瘍手術の実施に極めて有用であることが示された。
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