研究課題/領域番号 |
18591578
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲生 靖 東京大学, 医学部・附属病院, 研究拠点形成特任教員 (50372371)
|
研究分担者 |
藤堂 具紀 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80272566)
片岡 一則 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00130245)
西山 伸宏 東京大学, 大学院・医学系研究科 (10372385)
|
キーワード | 癌 / 脳神経疾患 / ドラッグ・デリバリー / ナノ材料 / 生体材料 |
研究概要 |
悪性脳腫瘍の予後は近年の画像診断・手術技術などの進歩にもかかわらずほとんど改善しておらず、新たな治療法の開発が切望されている分野である。親水性のポリエチレングリコール(PEG)とポリアスパラギン酸からなるブロック共重合体に疎水性の化学療法剤を結合させると、水中で安定な高分子ミセルを形成する。血管内に投与された高分子ミセルは数日間にわたり循環血液中にとどまり、腫瘍部で透過性の亢進した新生腫瘍血管を経て病変部に集積、その後徐々にユニットポリマーに解離してコアの薬物を放出し効果を現す。このように高分子ミセル製剤は抗癌剤のDrug Delivery System (DDS)として使用することができる。高分子ミセルの腫瘍特異的集積は、透過性の亢進した新生血管が豊富である一方でリンパ還流(drainage)の効率は乏しいという腫瘍の脈管構築のためとされる(EPR効果:Enhanced Permeability and Retention)。これらの脳組織の特殊性が高分子ミセル製剤の脳腫瘍治療への応用の可能性について、マウス脳腫瘍モデルを用い、薬剤集積と対抗腫瘍効果の評価を行うことを本研究の主目的とした。 pH反応型高分子ミセル化学療法剤の調製:平成19年度も引き続きpHの変化に反応して解離しコアの薬剤を放出する高分子ミセルの合成を分担研究者の西山・片岡らが担当した。本ミセルをアドリアマイシンに応用した薬剤は毒性が著しく軽減していることが、複数のマウスモデルで確認された。研究代表者の稲生らが開発を進めているdach platinミセルに関しては、毒性軽減の解決方法としての、内核と薬剤の間の化学結合を変化させることによる、腫瘍細胞内の物理的環境(低pH、低酸素)などに反応して解離するミセルを設計を引き続き検討した。脳内腫瘍における抗腫瘍効果:脳内腫瘍は、腫瘍細胞の浮遊液を定位的にマウスの脳内に注入して作製する。ICR nudeマウスを用い、3〜4日おき、3回の経尾静脈投与により治療を行った。また、効果を増強させるような血管透過性修飾薬剤の効果についても検討したが、当モデルにおいては効果増強は明らかではなかった
|