哺乳類成体の中枢神経にも、特定部位に神経新生があり、加齢と共に減衰する。多くの損傷がこの新生を賦活し、特定部位以外にもニューロン新生の潜在能力があるとされる。本研究に先立ち、我々は、ラット海馬のnon-neurogenic siteであるCA1に、虚血損傷により再生が誘導され、外因性成長因子がこれを増幅し、障害機能が回復することを示し、「内在性神経再生を介した自己修復能を応用した再生治療の可能性」を証明した(Cell、2002)。移植によらない本法は、倫理的問題と拒絶反応を回避できる。【目的】先立つ報告を発展させることを目的とした。すなわち1)対象の拡大(若年から加齢成体へ)、2)部位の拡大(海馬から線条体へ)、3)微弱な再生現象を解析するための高感度ツールの開発、である。【計画に対する成果】初年度に、ラット前脳虚血モデルの海馬CA1にて1)を証明したが(未出版データ)、加齢動物の虚血モデルの回収率が不良なためモデルを変更、若年および加齢成体の一側線条体にキノリン酸を投与する神経毒慢性モデルを開発、次年度初頭に国際学会にて発表した。両世代とも、内因性に再生現象があり(失われたニューロンが10%程度補充される)、外因性成長因子によりその再生が賦活化され(形態学的定量解析、免疫染色による定性および定量解析)、行動学的に(アポモルフィン誘導常同運動テストおよび前肢巧緻運動テスト)、損傷機能が回復した。今年度は2年次に有意差を証明し切れなかった加齢成体の定量解析を、nを増やして追試し、増幅された再生と、損傷前との相違を検討するため表現型解析を追加した。現在両結果を集計、投稿準備中である。3)に対し、パイロット的にBrdUを脳室内に投与し、若年成体においては高用量の腹腔内投与に匹敵し、加齢成体においても高い感度を認めた。今年度は若年成体で、腹腔内および脳室内投与群それぞれに、高および低用量群を設け、モデル作成を全て終了、解析待機中である。
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