本研究では、ヒト悪性グリオーマ培養細胞を対象とし、ROCK/Rho-kinase inhibitorを用いて、ヒト悪性グリオーマ培養細胞におけるRho-ROCK経路の役割を検討し、グリオーマ治療戦略の可能性を追求する。 ROCK inhibitor(Y27632)による腫瘍細胞運動能・浸潤能への影響に関する検討するために、ヒト悪性グリオーマ培養細胞を用いて、ROCK inhibitorの存在下における細胞運動能の測定(Phagokinetic track assay)、細胞浸潤能の測定(Invasion assay)、Migration assayを行い、運動能および浸潤能においてその存在しない場合よりも抑制効果があることが認められた。 また、ROCK Inhibitor(Y27632)の細胞増殖への影響において、ヒト悪性グリオーマ培養細胞を用いて、ROCK Inhibitor(Y27632)の存在下における腫瘍細胞増殖速度および細胞周期への影響を検討したが、いずれも抑制効果が認められた。 ヒト悪性グリオーマ培養細胞において、ROCK Inhibitor(Y27632)の存在の有無における腫瘍細胞の形態学的変化を免疫組織化学的に観察すると、細胞形態の変化、アクチンストレスファイバーの変化、ラッフィリングの変化、などを認めた。 以上、ROCK Inhibitor(Y27632)により、ヒト悪性グリオーマ培養細胞は形態学的変化をするとともに、腫瘍細胞の運動能・浸潤能・増殖能への抑制効果があることが示唆された。
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