本研究は、悪性グリオーマについて、ROCK/Rhoキナーゼインヒビターを用いて、悪性グリオーマにおけるROCK/Rho経路の役割を検討するとともに、グリオーマ治療戦略の可能性を追求することを目的とした。 ヒト悪性グ・リオーマ培養細胞において、ROCK/Rhoキナーゼインヒビターの存在下における細胞運動能の測定(Phagokinetic track assay)、細胞浸潤能の測定(lnvasion assay)、Migration assayを行い、運動能および浸潤能において抑制効果があることが認められた。また、ROCK/Rhoキナーゼインヒビターの存在下において腫瘍細胞増殖速度および細胞周期に対して抑制効果が認められた。さらに、腫瘍細胞の細胞形態の変化、アクチンストレスファイバーの変化、ラッフィリングの変化、などを認めた。ところで、ROCK/Rhoキナーゼインヒビターによる腫瘍細胞への効果を評価または予測するために、グリオーマ組織における遺伝子検索をおこなった。悪性のグリオーマに遺伝子異常がより観察され、さまざまな遺伝子異常が関与されていることが推測されるとともに、ROCK/Rhoキナーゼインヒビターの腫瘍細胞への効果と遺伝子異常との関連を検討した。 本研究によりROCK/Rhoキナーゼインヒビターが悪性グリオーマの運動能、浸潤能、細胞周期に影響を与えることがわかり、予後の悪い悪性グリオーマに対する治療に有効となる可能性が示唆された。さらに、遺伝子解析を行うことでROCK/Rhoキナーゼインヒビターの効果を推測し、テーラーメード治療に結びつく方向性になりうると考えられた。
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