本研究は、Alpha-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazole propionic acid(AMPA)型グルタミン酸受容体が、脳虚血などで誘導される急性興奮性神経細胞死においてどのような役割を果たしているか明らかにすることを目的としている。[I]昨年度の研究からAMPA受容体依存性急性興奮性神経毒性において海馬神経細胞の形態変化(細胞腫大と核内顆粒出現)、AMPA濃度依存的necrosis、DNA断片化が誘導されていたので、その細胞内メカニズムを解析した。1)Ca^<2+>蛍光指示薬Fluo 3-AMを用いてCa^<2+>イメージングを行ったところ、早期に細胞質と核内Ca^<2+>濃度上昇が観察された。2)IP_3 indicatorであるGFP-PHDを発現させた海馬神経細胞にAMPA処理をすると、細胞膜に局在していたGFP-PHDが細胞質へ移行した。よってAMPA受容体依存性急性神経毒性の1つのメカニズムとしてAMPA受容体刺激により細胞内Ca^<2+>が上昇し、産生されたIP_3が核内Ca^<2+>を上昇してDNA断片化を誘導している可能性が示唆されたが、今後詳細に検討する必要がある。[II]次に脳虚血における遺伝子治療への試みとして、AMPA受容体主要サブユニットのGluR1 mRNAサイレンシングによりAMPA受容体依存性急性神経毒性が抑制されるかを解析した。GluR1に対する3種類のshRNA発現plasmidをそれぞれ海馬神経細胞にtransfectionし、蛍光を発しているshRNA発現神経細胞にAMPA処理をして微分干渉顕微鏡下で観察したが、細胞腫大と核内顆粒出現を抑制しなかった。しかしGluR1 mRNAのサイレンシングによるAMPA受容体依存性急性興奮性神経毒性に対する効果については今後詳細に検討する必要がある。
|