研究概要 |
胚性幹細胞(embryonic stem cell, ES cell)から神経幹細胞を誘導することが可能になり、脳血管障害の治療においても胚性幹細胞由来神経細胞の移植が可能となってきた。本年度の研究は、サルES細胞由来の神経細胞をマウス脳虚血モデルに移植し生着を検討した。カニクイサルES細胞をSDIA法で2週間分化させ、そこからneuronal progenitorを作りマウス虚血脳に移植した。虚血モデルとしてはマウス中大脳動脈30分閉塞モデルを用いた。再潅流後24時間で外側線状体に細胞を移植し、14日後、28日後にその生着と分化を免疫組織学に検討した。移植した細胞は移植後14週後の免疫組織学検討でニューロンマーカーを発現しており、サルES細胞由来神経幹細胞も虚血脳内で生着することが示された。さらにこれらの細胞が、synaptophysinを発現していること、更に宿主脳に打ち込んだ逆行性トレーサーの取り込みが見られることにより、宿主神経細胞とシナプスを形成している可能性も示唆された。これらの内容はJ Cereb Blood Flow Metab誌に掲載された。更に移植時期の検討、胚性幹細胞の移植条件の検討を行っている。また、移植後の脳における虚血の影響を検討するためにMatrix metalloproteinaseのinhibitorであるtissue inhibot of metalloproteinases (TIMPs)の影響を検討した。脳虚血後24時間でTIMP-1の発現が上昇することが確認された。更にTIMP-1とTIMP-2のノックアウトマウスを用いて解析した。TIMP-1ノックアウトマウスでは脳虚血後の脳浮腫が増大し、神経細胞死が悪化することが確認された。また、HSP110の脳虚血での役割もノックアウトマウスを使い検討した。
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