研究概要 |
本年度は、glioma細胞U251MG(p53,mutant type)、D54MG(p53,wild type)を用いてSurvivinと放射線感受性との関連について検討を行った。両細胞においてSurvivinをblockすると、長期の評価(Day14)では両細胞とも放射線の増感効果が認められたが、短期の評価(Day5)ではU251MGにおいてのみ認められた。この差の原因を解明するため、我々は、Survivinのchromosomal passenger proteinとして機能に注目し、染色体の状態について検討を加えた。Flow cytometryでは、U251MGではD54MGと比較し、著明に異数体細胞の割合が増加しており、これは蛍光免疫染色による形態学的な評価においても明らかであった。さらに我々は染色体不安定性と密接な関連があるとされている中心体の数の異常についても検討を行った。すると両細胞とも中心体数の異常な増加を認め、さらにU251MG細胞における中心体数は、短期ではD54MGと比較し優位に増加していた。Day8の評価では両細胞の中心体数に有意な差は認められなかった。さらにより直接的に染色体不安定性の評価を行うためにFISH法による検討を行った。この結果も、染色体の不安定性はU251MGにおいてより顕著であった。これらの観察結果から、Survivinを抑制すると過度の染色体の不安定性が誘発され、その不安定性により放射線感受性が増加することが示唆された。さらに、その染色体不安定性は、特に短期の評価では、p53のstatusにより影響されることも示唆された。また形態学的にはこれらの細胞死の機序としては分裂細胞死が関与していることが示唆された。今後、さらにp16を強制発現させることにより、染色体不安定性にどのような影響を及ぼすのか検討を進めていく予定である。
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