研究概要 |
Signal transducer and activator of transcription (Stat) 3が神経幹細胞の分化に重要な役割を果たすことは良く知られている(J Neurosci 18:3620,1998)。例えばLeukemia inhibitory factor (LIF)によりStat3を活性化させると、神経幹細胞はニューロンへの分化が抑制されグリアへの分化が誘導されることが知られている(Science 278:477,1997)。近年このStat経路を抑制する系としてSuppressors of cytokine signaling (SOCS) familyが見い出され、注目を集めている(Nat Immunol 4:1169,2003)。SOCS3は脳虚血の際、penumbra領域で発現が増大することが知られており(Current Opinion in Neurology 16:699,2003)、脳虚血により内在性神経幹細胞が活性化し増殖することが報告されている(Mol Cell Neurosci,23:292,2003)。以上よりSOCS3は内在性神経幹細胞の維持と神経幹細胞からニューロンへの分化を促進することで神経保護効果を示す可能性が考えられた。まず今年度はSOCS3による神経幹細胞の神経分化促進機構を調べる為に、神経幹細胞にアデノウイルスベクターを用いてSOCS3を強制発現させた。その結果、astrogliogenesisが抑制されneurogenesisが促進された。従ってSOCS3を強制発現させると神経幹細胞から神経系への分化を誘導促進することが明らかとなった。そこで現在はいかなる転写因子がSOCS3の神経分化促進作用に関係するかを、b HLH転写因子を中心に検討を行っている。
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