研究課題
虚血性脳血管障害に対する再生治療の試みに関しては、既に幾つかの報告がなされている。例えば神経幹細胞の脳室内移植が脳虚血の治療に有効(Ann Neurol、53、259-63、2003)であり、骨髄幹細胞の脳実質内移植が虚血性神経障害を軽減する事(Exp Neurol、174、11-20、2002)が知られている。更には脳虚血により、神経幹細胞の増殖が活性化する事(Mol Cell Neurosci、23、292-301、2003)も知られている。これらの知見は虚血性脳血管障害の治療に再生療法が有効である事を示唆している。我々も神経幹細胞を用いて虚血性脳血管障害に対する再生療法の有用性を検討した。しかしながら、我々の実験系では明らかな治療効果は見られなかった。この原因として注入した神経幹細胞が神経細胞へ分化せず、グリア細胞へ分化している可能性が考えられた。この問題を解決するために、神経幹細胞を予め神経細胞に分化するように誘導することを考えた。昨年度我々はStat3抑制因子であるのSOCS3を発現するアデノウイルスベクターを用いて、神経幹細胞でのStat3の活性化を抑制した時の影響を検討した。その結果SOCS3を用いてStat3の活性化を抑制すると、神経幹細胞から神経細胞への分化を促進させ、かつ神経幹細胞を殖やすことが明らかとした。そこで本年度我々はSOCS3を強制発現させた神経幹細胞を用いた細胞・再生治療の可能性を検討した。残念なことに我々の実験系では、SOCS3を用いて、神経幹細胞を神経系への分化を高めてみても明らかな脳虚血症障害の治療効果は得られなかった。この原因としては神経幹細胞の移植の方法・時期・量等の様々な要因が関与していると考えられる。従って今後これらの移植条件を含めて更なる検討を行う予定である。
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