研究概要 |
骨髄間質細胞はNotch遺伝子の細胞内導入と、数種のneurotrophic factorを培地に添加することにより、高い確率でneuronに分化誘導することが可能であり、ラット脳梗塞モデルに骨髄問質細胞由来のneuronを移植すると神経機能回復に有効であることは報告した。この研究では遺伝子導入を行わずにneuronへ分化させ、さらに、脳梗塞モデルへ移植後、神経回路再生をコントロールすることを目標にした基礎実験である。骨髄間質細胞の培養に際し、電気刺激を加えることがneuronへの分化を促進するのではないか、という仮説を立て、実際に電気刺激培養を試みた。電気刺激培養装置は崇城大学薬学部徳富教授のご厚意により提供を受けた。電気刺激条件はパルス持続時間3msec、刺激頻度5Hz、出力1mAで3日間から開始し、出力を最大4.55mA、刺激頻度50Hzまでで、様々な条件を試したが形態学的にneuronへの分化は認められなかった。次に培地にbFGF,CNTF,Forskolinを加えた状態で電気刺激を加えてみたところ、形態学的にはneurite様の突起の伸長が見られたが、免疫染色においてはneuronのマーカー(Map2,Tuj1,NeuN,NF)を特異的に示すことはなかった。また、電気刺激培養において、電位の向きがneuriteの伸長方向に影響を与えるか、ということも検討したが、これまでの様々な条件下では関係は認められなかった。同じ発想で神経幹細胞を培養中のDishにも電気刺激を加えてみたが、nuerosphereからneuronへの分化は認められなかった。また、培地に電気刺激を加えると神経幹細胞は50%近くが死んでしまうことがわかった。刺激出力が高いとその傾向がある。培地のpHに影響を与えるのか、細胞そのものが電気刺激に対する耐性の閾値が低いと考えられたが、神経幹細胞に比べると骨髄間質細胞は耐性の閾値が高いといえる。今後は、刺激条件の変更、neurotrophic factorのカクテルの変更、梗塞脳の切片をそのまま培養液中に加え、電気刺激を加えることを考えている。
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