研究概要 |
頸部頸動脈狭窄症に対する内膜剥離術(CEA)の術後合併症として過灌流症候群が知られている。本研究では、1)CEA術中に頸静脈球部から静脈血をサンプリングすることにより,内頸動脈遮断により発生するフリーラジカル反応と術後過灌流との間に関連があるのか。2)CEA術前後にPETを用いて大脳皮質神経細胞の損傷度を,また超高磁場MRIを用いて大脳白質繊維の損傷度を定量し,術後過灌流および高次脳機能障害との間に関連があるのか。について検討し,CEA術後過灌流の発生メカニズムと神経組織に与える影響について解明する。結果として、「CEA後過灌流発生の有意な独立因子は術前の脳循環低下と頸動脈遮断中の重度脳虚血であった。脳内のフリーラジカル反応の指標である頸静脈球部MDA-LDL濃度は、内頸動脈遮断前に比し内頸動脈遮断解放後5分および20分で有意に高い値を示した。また、遮断の脳虚血重症度と遮断解放後の頸静脈球部MDA-LDL濃度は高い正の相関を示した。また、遮断解放後の頸静脈球部MDA-LDL濃度は術後高次脳機i能障害発生の有意な独立因子であった。」以上の結果から、CEA後の高次脳機能障害の原因は術中の内頸動脈一時遮断により発生する脳内フリーラジカルであることが証明された。また、この脳内フリーラジカル反応は血行再建術後過灌流発生にも関与し、術前の脳循環低下+内頸動脈一時遮断による脳内フリーラジカル発生→術後過灌流→高次脳機能障害という図式が示唆された。現在、目的2)について解析中である。
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