前年度までに瞳孔計測システムの試作が完了したので当初の計画に沿って健常者での測定を開始したところ、ベッドサイド環境での測定ではデータへのノイズ混入(瞳孔径の自動認識システムの誤作動)のために安定した瞳孔反応の計測が困難であることが明らかになった。そのため、まずその原因の究明を行った。眼球画像の濃度ヒストグラムは実験室でのデータにおいては明確な谷を持つ双峰形になるため、谷の部分を濃度閾値として画像を2値化することにより瞳孔部を他の領域から分離できる。しかしながら、ベッドサイド環境では周辺光の影響で必ずしも濃度ヒストグラムが明確な谷を持たないこともあることがノイズ混入の原因と推察された。濃度ヒストグラムの閾値を設定する部分を手動で設定できるようにLabVIEWでコンパイルされた解析ソフトウェアのプログラムを修正した。加えて瞳孔径を2方向で同時計測できるようにすることによってデータの連続性を高めるようにした。ただオンラインでの解析には限界があることも明らかになったのでデータのオフライン解析を容易に行えるようにバイナリーからアスキーデータへの自動変換保存機能を追加した。これによりExcelなどの表計算ソフトウェアでの解析が可能となった。さらに周辺光の混入を最小限にするようにLEDおよびCCDを装着したゴーグルに遮光システムを加えた。以上のような修正を測定システムに加えることによって本研究で開発した瞳孔計測システムを臨床応用することが可能となり、当初の研究予定に沿ったデータ取得を開始した。
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