研究概要 |
近年,蛋白分解酵素阻害薬による悪性腫瘍への効果が認められ,成人領域では骨髄腫や固形腫瘍でも一定の評価を得ている.小児期に多い固形腫瘍である小児脳腫瘍は多剤併用化学療法を含めた複合的治療の進歩により予後の改善されてきているが予後不良群の成績は依然として改善に乏しく、新しい治療構想が求められている.そこで、今回,我々は,プロテオソームインヒビター(PI)と温度可逆性ポリマーを用いた新たな脳局所療法を開発するために、まず、PIの脳腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果について検討を行った. 方法は、PIの一種であるMGI32が脳腫瘍細胞に対して抗腫瘍効果があるかどうか検討した.対照は小児脳腫瘍で最も多いとされるヒト髄芽種の培養細胞とした.髄芽種の予後にcaspase-8の発現の関与を示唆する報告があることから,caspase-8発現の高い培養細胞であるDAOY, ONS-76と発現の低下したD283を選択した.殺細胞効果を判定するためにMG132の投与濃度を1nMから10uMまで変化させ濃度依存性に抗腫瘍効果を認めるかどうかをMTS assayを用いて検討した. 結果,これら3種類の腫瘍細胞すべてにおいて投与濃度1μMから10uM,暴露時間48時間でcell viabilityが低下することを確認した. 現在、各cell lineにおいて、殺腫瘍効果に関与する因子に差があるかを検討するために、PIの殺腫瘍効果におけるapoptosis, cell cycle arrestの関与の割合についてFACscanを用いて検討中である.またPIによるcaspase-8賦活化があるかについてWestern BlotやReverse Transcription RNA解析にて確認している.さらに今後,インターフェロン等の薬剤にてcaspase-8の発現誘導しPIの殺腫瘍効果に影響を及ぼすかについても合わせて検討する予定である.
|