研究概要 |
脳卒中後の片麻痺と視床痛を有する症例5例に対して、疼痛の治療と運動機能回復を目的として、大脳皮質運動野刺激を行った。 刺激電極にはメドトロニック社製のRESUME電極を用い、電極の留置部位の決定には、cortico-spinal MEP記録を用い、cortico-spinal MEPのD-waveが最も高振幅で記録される部位を選択した。また、手の領域の刺激には中心溝に平行に、足の領域の刺激には上矢状洞に平行に電極を留置した。前胸部皮下のimplantable pulse generatorと結線し、刺激幅0.21msec,刺激頻度25Hz,刺激強度2-6Vで除痛効果の認められる程度とれた。疼痛については、5例中3例で著効を呈した。また、他の2例は刺激のみでは十分に満足よって、疼痛の軽減が得られた。 運動機能については、3例で機能改善を認めたが、2例では四肢の痙性が増加した。運動機能の改善群と増悪群を比較すると、改善群では短時間の刺激で十分な除痛効果が得られたために、1日の平均刺激時間は3時間以下であった。一方、増悪群では1日の平均刺激時間が10時間と8時間であった。さらに、痙性が増加した2例では、一時、刺激を中止したところ痙性の増悪が改善した。 以上の結果から、運動機能の改善を目的とした運動野刺激は、1日の平均刺激時間を3時間以下に制限するべきで、刺激をしすぎると痙性が増加することが明らかとなった。
|