研究概要 |
平成19年度に本学高度救命救急センターに搬入された入院時GCS5以下の成人重症頭部外傷の4例(18-75歳)に軽度低体温療法を施行した。その際ICPのほかCPP, SjO2, Pbto2をモニターし本療法の有用性について検討した。35℃前後の全身冷却による低体温療法によりICPは低下したが,CPPやsjo2には変化はみられずPbto2も正常値に近似する傾向を示した。しかし48-72時間後の復温時にはICPの上昇を2例に認め、復温の方法にさらに一考を要すると考えられた。つまり35℃前後の微低体温によりICPは有意に低下し,他のパラメーターにも大きな変動はなく,以前の研究成果の裏付けが可能であった。しかし入院時GCS3であった1例は死亡し,生存例の転帰はmoderate disability 3例で満足すべき成績であった。一方同時期に正常体温に維持した4例の転帰は3例が死亡し1例のみ救命し得た。つまり少なくともGCS5以下の症例に対する微低体温療法は急性期の脳保護と転帰改善の上で有用である可能性が示された。また入院時にGCS6-8であった6例(4-70歳)には正常体温に維持する方針で管理を行ったがいずれも死亡例はなかった。今後15歳以下の小児例においても安全に施行でき有効性が得られた。今後症例を増やし転帰を含めて詳しい分析を行う予定である。さらに日本神経外傷学会のデータバンクに蓄積されている我が国主要施設での低体温療法の結果とも照合対比を行う予定である。
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