研究概要 |
一般に、担癌生体では免疫機能が低下し、それが免疫系細胞による癌細胞の排除が困難である一因になっている。われわれは、担癌生体における免疫抑制の機構を脳腫瘍(グリオーマ)を用いて、マウスで解析している。その際に、我々は、グリオーマとマクロファージを共培養すると、マクロファージから大量のプロスタグランジン(PG)E2が産生され、このPGE2が免疫抑制に働いていることを見出している。脳内に発生するグリオーマ対する免疫反応を調べるには、脳のマクロファージ系細胞であるミクログリアを実験に用いることがより重要であると考えられる。本研究ではマウスを用いてミクログリアとグリオーマの共培養によるPGE2産生の誘導について解析し、以下の結果を得た。 1)新生児マウスの脳内より、ミクログリアを単離し、増殖因子としてのインシュリンの存在下で2週間培養し、ディッシュ付着性のミクログリアを得た。 2)このミクログリアをLPSやCpG-ODNで刺激すると、TNF-α等のサイトカイン、PGE2を産生した。 3)ミクログリアにグリオーマ、または、グリオーマの培養上清を添加すると、PGE2産生が著明に亢進した。また、PGE2合成酵素であるCOX-2, mPGES-1の発現も亢進した。 4)ミクログリアにインドメサシン等を加えてPGE2合成を抑制したり、PGE2リセプターアンタゴニストを添加すると、TNF-α産生が回復した。 5)mPGES-1ノックアウトマウス由来のミクログリアでは、PGE2産生が見られなく、またTNF-α産生は抑制されなかった。 以上より、脳内ミクログリアがグリオーマ担癌生体においてPGE2を大量に産生し、免疫抑制に重要な役割を演じていることが明らかにされた。
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