研究概要 |
悪性グリオーマは中枢神経系に原発する悪性の腫瘍で種々の治療法が試みられているが、予後不良のまま残されている。患者においてはグリオーマに対して免疫反応が誘導されるという報告はあるものの、免疫療法のみでグリオーマを治療するのは困難である。グリオーマに対して免疫療法が成功しない原因として、担癌生体では免疫反応が抑制されているためと考えられている。したがって、担癌生体における免疫抑制機構を解明し、免疫抑制状態を改善することにより、有効な抗グリオーマ効果が期待される。我々はグリオーマに対する免疫反応の機構を解析している際にグリオーマとマクロファージを共培養すると、マクロファージから大量のPGが産生されることを見出した。さらに、このマクロファージでは腫瘍免疫に重要なIL-12,TNF等のサイトカイン産生が低下していることから、グリオーマがマクロファージに作用して、PG産生を誘導し、免疫抑制状態を引起こすという仮説を提唱した。 今回、中枢神経系のマクロファージとしてのミクログリアを用いて、免疫反応におけるミクログリアの役割と担癌状態における免疫抑制機構を解析し、次の点を明らかにした。 (1)マウス脳内より分離したミクログリアをグリオーマと共培養することにより、ミクログリアが大量のPGを産生した。一方、TNFの産生は抑制された。 (2)PG合成酵素をKOしたマウス由来のミクログリアはPGを産生しなく、TNF産生も抑制されなかった。 (3)PG合成酵素をKOしたマウスでは腫瘍の増殖も抑制され、有効な免疫反応が誘導された。 以上より、ミクログリア由来のPGが免疫反応を抑制すること、またPG産生をコントロールすることにより、腫瘍に対する宿主の抵抗性を誘導できる可能性が明らかにされた。
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