全実験を通じてラット腰部脊柱管狭窄モデルを用いた。【実験3】を除いて、後枝知覚神経より導出した異所性興奮活動を解析指標とした。 【実験1】人工的大静脈遮断による欝血負荷による異所性発火活動と後根神経節の酸素濃度低下との直接的対応関係を解明できた。電気刺激による馬尾賦活が酸素濃度低下を強め、発火活動をさらに増強させることを解明した。 【実験2】健常動物と腰部脊柱管狭窄症動物の後根神経節ならびに脳脊髄腋の酸素濃度を計測して比較した。いずれも健常と狭窄症では有意な差を認めず、低酸素負荷時の発火の主たる誘因は後根神経節の感受性亢進であることが判明した。 【実験3】腰部脊柱管狭窄モデルでは、馬尾の低酸素負荷時に知覚神経のみならず運動神経において漸増性の発火活動が出現することが分かった。 【実験4】腰部脊柱管狭窄モデルでは、硬膜外のシリコンを用いて圧迫を行うことにより静脈うっ滞の負荷の場合と同様に漸増性の発火活動が出現することが分かった。 【実験5】腰部脊柱管狭窄モデルではプロスタグランジンE1の持続点滴によって、後根神経節および脳脊髄腋の酸素濃度が増大することが判明した。また、圧迫された直下の馬尾血流量もプロスタグランジンE1の持続点滴によって増大することが分かった。 【実験6】腰部脊柱管狭窄症において、リドカイン発火反応に抑制的影響を及ぼすことが観察されたが、後根神経節の酸素濃度の上昇は見られなかった。 以上の結果から、腰部脊柱管狭窄症における間欠跛行の出現メカニズムをより明らかとすることができた。治療的側面から行って実験では、腰部脊柱管狭窄症の治療が馬尾血行動態の改善と後根神経節興奮性の抑制に集約されることが結論として導かれた。
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