以下のように肉腫に対する収束超音波の効果を組織学的に検討した。 【対象と方法】収束超音波装置は、長さ約8.5mm、幅2mmの限局性の部分に照射可能なようにトランスデューサー(日立製作所製)とアンプ等を組み合わせて作製した。Sarcoma180細胞3.0×10^5個をマウス背部皮下へ注入し、腫瘍が径1.5±0.2cmとなった時点で軟部腫瘍モデルとして実験に供した。マウスは対照群と照射群(各群30匹)に分け、照射群では超音波ガイド下に腫瘍の中心部に10W、10秒問の照射を行った。30匹中10匹では照射後の腫瘍の最大径を経時的に計測し、4週目まで生存率を算出した。また両群とも照射後1、3、7、14日目に各5匹から腫瘍部分を採取し、腫瘍壊死率を計測した。さらにTRAP染色でマクロファージの浸潤程度を、tunel methodでapoptosis rateを計測した。 【結果】腫瘍最大径は7日目以降、照射群で有意に小さく(p<0.0O1)、生存率も照射群が80%と有意に良好であった(対照群、20%;p=0.005)。組織学的には照射後1日目では腫瘍中心部には壊死がみられ、7、14日目と進むにつれ、壊死部の周囲にマクロファージの浸潤がみられるようになり、残存した腫瘍細胞ではapoptosis rateが経時的に増加していた。対照群では壊死はわずかで、腫瘍の増殖、浸潤が主体であった。 【考察】肉腫に収束超音波を照射すると、部分的壊死、壊死周囲へのマクロファージの浸潤、残存腫瘍のapoptosisが生じ、これらにより良好な抗腫瘍効果が得られたと考えられた。今後は正確に広範な照射を行える装置の開発と適正な条件の検討が課題と思われた。
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