研究課題
基盤研究(C)
犬を用いて脊髄横断モデルと脊髄圧挫モデルを3匹ずつ作成した。これらについてSCEP(脊髄誘発電位)とMEP(運動誘発電位)を測定し両モデルの差異を生理学的に調査した。脊髄横断モデルでは横断直後に切断部位から約1椎体頭側高位まで電位が減衰するが、それよりさらに頭側では電位は正常で麻痺は上行しなかった。脊髄圧挫モデルにおいても同様に圧挫直後に受傷部位だけでなく受傷部位の頭側約1椎体高位の脊髄においても電位が減衰した。慢性期モデルとして、脊髄切断後1週間の犬と脊髄圧挫後1週間の犬を3匹ずつ作成した。脊髄切断後1週間の犬では切断直後の麻痺レベルは平均3.5±0.3cmの麻痺の上行をみとめた。脊髄圧挫後1週間の犬でも麻痺は切断直後と比較し2.5±0.5cmの麻痺の上行をみとめた。脊髄切断後1週間の犬と脊髄圧挫後1週間の犬の損傷脊髄病理標本を用いて両者を比較した。脊髄横断モデルでは横断した上位脊髄の1-2椎体分に細胞配列の不整をみとめた。脊髄圧挫モデルでは圧挫に伴い脊髄の灰白質が練り歯磨きのように上位に押しやられたこと(tooth paste phenomenon)により、圧挫した脊髄のさらに2椎体分頭側の脊髄にも損傷を生じていた。脊髄横断、脊髄圧挫とも時間とともに1週間で麻痺が上行し、両者で損傷脊髄高位に差はなかった。これは脊髄切断によっても圧挫損傷が起こることが原因であると考えた。脊髄に浸潤した悪性腫瘍を摘出する場合にやむを得ず脊椎と脊髄を同時に一塊に摘出する際には、切断した上位脊髄は結紮しない方がよいと考えられた。もしやむを得ず横断する際には、できるだけ鋭利なメスを用いて切断する必要があると考えた。また、脊髄損傷の場合に受傷後数日の間に麻痺が上行する病態の証明になると考えた。
すべて 2007 2006
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Journal of Orthopaedic Science 12(3)
ページ: 311-315
Spine 31(4)
ページ: E117-122
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