研究概要 |
ユーイング肉腫は小児にみられる悪性骨軟部腫瘍であり, 骨肉腫に次いで頻度が高く生命予後不良な疾患である。この腫瘍の約90%に存在する融合遺伝子EWS-Fli1は, 強力な転写因子としてテロメラーゼ、血管内皮増殖因子、ホスホリパーゼD2(PLD2)などを調節し腫瘍化を促進すると考えられている。Aurora Aおよび Aurora Bはセリン・スレオニンキナーゼの一種で, 細胞周期の制御に重要な役割を果たし, 様々な癌細胞において過剰発現していることが知られている。今回、EWS融合遺伝子が、Aurora キナーゼ遺伝子のプロモーターに直接結合してその発現を促進することを明らかとした。この知見はユーイング肉腫の治療の標的としてAurora キナーゼが有望である可能性を示唆する。 一方我々は以前、EWS/Fli-1がphospholipase D2(PLD2)を介して、細胞内増殖シグナルであるMEK/ERK経路やPI3K/Akt経路を活性化することを報告した。今回、これらの経路を阻害することで、ユーイング肉腫の、抗がん剤に対する感受性を高め、治療効果を促進することを明らかにした。
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