研究概要 |
ラット坐骨神経圧挫モデルを用いて、末梢神経におけるWaller変性と引き続きおこる神経再生時におけるTNFα(Tumor necrosis factor-alpha)、IL-10(Interleukin-10)の経時的・部位的変化の検討を行った。成熟ラットの坐骨神経を坐骨切痕の下で155g/mm^2圧の血管クリップにて圧挫し、axonotmesisモデルを作製する。損傷後1,3,7,14,21,28,56日に坐骨神経を坐骨切痕中枢から末梢まで採取し、免疫組織化学染色・ELISAを用いて検討を行った。 TNFα陽性細胞数は損傷後3日で末梢全ての部分において有意に増加し、7日で減少し、有意差がなくなった。損傷後14日に末梢5・15mmでさらに減少がみられた後、21日から56日後では有意差がなくなった。TNFα陽性細胞数の大きさはWaller変性時に有意に大きくなっていた。TNFαは前炎症性サイトカインであり、血液-神経関門(BNB)の破綻やmacrophageの神経内誘導に関与しているといわれている。我々の以前の検討では末梢神経損傷後、軸索の変性に伴いBNBは3日で一斉に破綻し、中枢部より14日から徐々に回復していたことより、TNFαがBNBの変化に深く関わっていることが考えられた。 一方、IL-10陽性細胞数は損傷後翌日に有意に減少し、3日で一斉に増加に転じ、7日後に末梢全てにおいて最大となった。以降、徐々に中枢より減少し、56日では末梢全ての部位で有意差はなくなった。ELISAによるIL-10の蛋白量も同様の結果を示した。IL-10は抗炎症サイトカインであり、これらの結果より、末梢神経損傷とそれに伴う再生時において、IL10の変化はTNFαの変化に先立っておきており、IL-10はTNFαの変化の鍵になっていることが示唆された。
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