研究概要 |
PVAハイドロゲル(平均分子量8800、含水率30-40%)を原料として径約1.9mm、長さ約20mmの丸鉛筆型に加工したインプラントを動物実験に使用した。椎間板へのアプローチのみを行う手術をsham、アプローチ後椎間板にKirschner wireで貫通孔を作成し、変性をおこさせる手術をcontrol(変性モデル)、さらにKirschner wireで作成した孔にインプラントを挿入し、椎間板を貫通させた状態で留置する手術をPVA(人工椎間板モデル)とし、日本白色家兎の腰椎椎間板に対していずれかの手術を行った。実験動物は術後1,3,6ヶ月のいずれかで安楽死させ、採取した椎間板(sham群15、control群15、PVA群30椎間板)に対してレントゲン的、組織学的評価を行った。術前および屠殺時にレントゲン透視撮影を行い、椎間板高の変化を評価した。また、サンプルの正中面での凍結薄切切片を組織観察し、線維輪の変性度を5段階評価した(変性度0:変性なし〜変性度4:高度の変性)。 神経損傷、深部感染、インプラント脱転例はなかった。レントゲン的にはPVA群の椎間板高はcontrol群のそれより有意に高く、sham群と同等であった。組織学的にはsham群の線維輪の変性は術後6ヶ月でもわずかであったが、control群では術後1ヶ月から線維輪全体に強い変性を呈していた。PVA群の変性度は常にcontrol群より有意に低かったが、sham群よりは高い傾向にあり、術後6ヶ月においてのみsham群との有意差を認めた。インプラントを椎間板内から摘出し、実体顕微鏡で観察したところ、破損しているものはなかった。 本研究で行った人工椎間板モデルは椎間板貫通型のインプラントを用いるなど臨床的には一般的でない点があったが、脱転を完全に防ぎ、椎間板高保持効果も十分に得られたという点では優れた実験モデルであった。そして人工椎間板によって、線維輪の変性の進行を抑制する効果があることも組織学的に証明できた。より効果的に人工椎間板を行うためには、さらにインプラントの性状について絞り込む必要があると思われた。
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