研究課題/領域番号 |
18591631
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 助教授 (10263261)
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研究分担者 |
上田 孝文 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター, 臨床研究部, 医師 (00324773)
冨田 哲也 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (30283766)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60191558)
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キーワード | 骨肉腫 / 肺転移 / VCP / NFκB / IκBα / パルテノライド / VEGF / アポトーシス |
研究概要 |
マウス骨肉腫細胞株DunnからFidlerの方法にて得られた高肺転移株LM8は皮下移植により腫瘍を形成し、その後自然肺転移を生じる。我々は以前、これらの細胞株の肺転移能の差を規定する遺伝子をSuppression subtractive hybridization法により同定し、その後のスクリーニングでvalosin-containing protein(VCP)がLM8で恒常的に高発現しており、LM8の高肺転移能に関与していることを報告した。VCPはユビキチン化を受けたIκBαの分解に直接関与する蛋白で、NFκBの活性化を促進するため、今回我々は、LM8の肺転移におけるNFκBの役割を検討した。NFκBが恒常的に活性化しているLM8に変異型IκBを強発現させ、選択的にNFκB活性を阻害した細胞株LM8mIκBを作成した。この細胞株あるいは天然NFκB阻害剤であるパルテノライド(PAR)を用いてLM8の転移能におけるNFκBの役割について検討した。皮下移植自然肺転移モデルによる検討では、LM8mIκB細胞はLM8に比べ低肺転移能を示した。またLM8の皮下移植でPARの予防的投与(移植と同時に開始)を行うと肺転移は容量依存性に抑制されたが、治療的投与(移植後17日目より開始)では抑制されなかった。一方、マウス尾静脈注による肺転移実験系においてもLM8mIκB細胞はLM8に比べ低肺転移能を示し、LM8尾静注と同時にPARによる治療を開始する実験でも肺転移が著明に抑制されたが、尾静注後48時間からPARの投与を開始した場合には肺転移は抑制されなかった。蛍光標識したLM8を尾静注した後、経時的に肺組織に生着した細胞の量を組織抽出液中の蛍光で計測したところ、尾静注と同時にPAR投与を開始するとした場合、未治療群に比べ尾静注後48時間で有意に肺に生着した細胞が減少することがわかった。このことからNFκBはLM8の肺転移に於いて、細胞の肺血管床着床後から肺組織内に浸潤して小コロニーを形成するまでの段階で重要な役割を担っていると考えられる。また、分子機構としては抗アポトーシス、VEGF産生促進などが重要なメカニズムであると推測している。
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