研究概要 |
アピジェニンは、紅茶やパセリ、オレンジ等の多くの野菜やフルーツに含まれるフラボノイドの1つで、古くから、その抗炎症作用、鎮痙作用、鎮静作用が知られている。前立腺癌、乳癌、大腸癌などで、抗腫瘍作用が報告され、食物摂取にてガン予防が出来る可能性があるものとして注目を集めている。今回、我々は、アピジェニンが、骨肉腫に対しても同様な抗腫瘍作用を有しているかどうかを検討した。マウスDunn骨肉腫細胞株、およびそのサブクローンで高率肺転移株のLM8を、アピジェニン(0,5,10,20,50μM)の存在下で培養し、WST-8 assayにてその細胞増殖への効果を、Tunel法、FACSにてアポトーシスへの効果を、scratch wound healing assayにて遊走能への効果を、それぞれ検討した。Dunn、 LM8、いずれの細胞においても、アピジェニンは用量依存的に、その増殖を抑え、アポトーシスも用量依存的に、有意に増加させた。同様に細胞の遊走能も抑えた。アピジェニンは、骨肉腫細胞株の増殖を抑え、アポトーシスを誘導し、遊走能を抑え、強い抗腫瘍作用を示した。以上のことから、骨肉腫に対しても有用な治療薬となる可能性がある。さらに、骨肉腫を始め多くの悪性腫瘍の死因となっている肺転移に関しても、アピジェニンが有効である可能性が示された。アピジェニンの作用機能としては未知であるが、昨今、卵巣癌において、VEGFやhypoxia-induced factor 1(HIF-1)を抑制していることが報告された。VEGFやHIF-1の活性化は癌転移の成立に強く関与していることが示唆されており,また,悪性腫瘍治療の難治の一因として腫瘍のhypoxic areaへの治療の困難が挙げられる.アピジェニンは、このような点でも癌治療における有用性が期待され、従来の治療法と併用して行なうことで、さらなる治療効果が期待できると推測している。来年度、細胞レベルから担癌動物モデル,癌転移モデルへと実験をすすめる予定である。
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