研究概要 |
本研究では、SYT-SSX蛋白による滑膜肉腫発症機構を明らかにするためにSYT-SSXを介したプロテオーム解を行い、SYT-SSXと相互作用する蛋白群を検討することを目的とした。 (1)SYT蛋白、SSX蛋白、SYT-SSX蛋白と結合する蛋白群の検出 抗体認識用FLAG-TagおよびPull-down用GST蛋白の融合蛋白として発現するSYT,SSX,SYT-SSX cDNAのプラスミドベクターを構築した。ヒト正常腎細胞株HEK293に遺伝子導入し、その細胞質抽出液のFLAG融合蛋白をFLAG抗体ビーズでPull-down後、抗SYT抗体、抗FLAG抗体でウエスタンブロットを行った。SYT蛋白は十分量pull-downされている事を確認したが、SYT-SSX蛋白は収量が微量であった。そこでGST融合蛋白型で行ったところやはりSYT-SSX蛋白は収量が微量であった。これは、蛋白の局剤に依存する結果と考えられた。そこで、核分画を高塩濃度処理することにより核蛋白を抽出後、塩濃度を希釈し細胞質抽出液と混合した。この全細胞抽出液をFLAGビーズでpull-downさせTag融合型SYT-SSX蛋白を精製し、SYO-1滑膜肉腫細胞株の全細胞抽出液と混合し複合体形成をさせた。そのSYT-SSX蛋白複合体をTagビーズで回収し、SYT-SSX複合体蛋白群をSDS-ゲルで分離した。その未知蛋白のバンドは量が少なく質量分析計の解析には十分ではなかった。 (2)各種阻害剤等によるSYT-SSX細胞内局在変化の検討 SYT、SSX、SYT-SSX蛋白の局在を明らかにするために、SYT,SSX,SYT-SSX cDNAを蛍光蛋白標識用の発現ベクターに導入しReverse transfection法により8-wellチャンバーのSYO-1滑膜肉腫細胞にTransfectionを行った。蛍光蛋白GFPの融合型蛋白として発現させた場合、SYT-SSX蛋白は核内にspeckle状に点在することを確認した。GFP融合型蛋白発現系を用いて、ある種の酵素阻害剤の存在下で蛋白局在の変化を検討した。 (3)蛍光蛋白GFPをマーカーとした発現誘導可能なSYT-SSX導入細胞を樹立した。誘導時、非誘導時において、SYT-SSX蛋白により影響を受ける発現変化する遺伝子を解析した。SYT-SSX遺伝子発現誘導により約1.06%の遺伝子が発現減少を示し、約0.56%の遺伝子が増加することが判明した。
|