本年度は塩酸ドキソルビシン封入FDGリポソームを骨肉腫ラットの頚静脈より静注し抗腫瘍効果を検討した。ラットの背部にMSK細胞(1x10^7 cell/rat)を移植し、2週間後に骨肉腫の長径が10mm以上になったことを確認した。その際、径が10mm以上になった骨肉種は自然に消退しないことを確認した。1)無治療(コントロール群)、2)塩酸ドキソルビシン(DOX)群、3)塩酸ドキソルビシンリポソーム(DOX-L)群、4)塩酸ドキソルビシン封入FDGリポソーム(DOX・FDG-L群)の4群を作製し検討した。各群ともDOXが5mg/kgになるように換算し各治療薬を投与した(n=6)。 治療開始1週間後の腫瘍体積はコントロール群が46.5±19cm^3、DOX群が13.2±8.7cm^3、DOX-L群が18.8±7.4cm^3、DOX・FDG-L群が6.2±6.Ocm^3で、いずれの治療群も腫瘍体積がコントロール群に比べ有意に小さかった。DOX群とDOX-L群の効果は治療開始2週間後以降には明らかな有意差はないものの、コントロール群に比べ優れている傾向が認められた。DOX・FDG-L群は各週ともにコントロール群に比べ有意に優れていた。副作用の指標に各群の体重の変化も評価した。各群ともいずれの週においても有意差はなく、明らかな副作用の出現は認めなかった。各治療における群間の有意差を示すためには、さらに個体数を増やす必要があるものの、DOX・FDGリポソームは血中停滞性と腫瘍のFDG取り込み機構を利用することにより薬剤を効率的に腫瘍に蓄積させ、抗腫瘍効果を発揮することが示唆された。
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