期間内での実験目的は、我々の作製したアパタイトファイバー(以下AFS)をスキャフォルドにして骨再生を行い、実験動物に移植したAFSと骨との癒合の程度を評価し、骨欠損補填に利用可能な医療用デバイスを開発することである。ラット脊椎固定術モデルに対して、細胞成長因子(BMP-2)を負荷したアパタイトシートを移植骨として脊椎固定術を施行した。その結果、ほぼ100%の骨癒合率を獲得し、脊椎固定術における移植骨として応用可能と考えられた。しかし、高い気孔率を持つ反面、力学的強度に乏しくもとの形を保てないという欠点を克服するため、アパタイトシートの高強度化が必要と考えられた。 18年度から19年度にかけて、高強度化したアパタイトファイバー(以下AFS)の骨欠損補填材料としての有用性について評価するため、以下の実験を行った。具体的には、AFSをイノシトール燐酸で表面修飾することにより高強度化したAFS(以下IP-AFS)を作製した。24週齢日本兎の脛骨中央に直径4.4mmのドリルを使って骨孔を作製後、IP-AFSを移植、8週間埋入した。その後移植部を切除、非脱灰研磨標本を作製し、組織学的検査を行い骨形成の程度を評価した。なお、比較対照として、ペンタックス社バイオペックス[○!R](以下control)をIP-AFSと同等の体積、形状に加工して利用した。結果、肉眼所見、病理組織所見にて、IP-AFS周囲には新生骨が旺盛に形成され、IP-AFSと骨性に密に癒合しているのが認められた。一方control群も、control周囲に新生骨形成を認めたものの、新生骨内には多くの空洞が形成されていた。また、controlとの骨性の癒合もIP-AFS群と比べると乏しかった。Controlの方がIP-AFSよりも力学的に脆く、術中の操作により骨内で粉砕してしまうために、移植部周囲の骨と密着しにくかったことが原因の1つと考えられた。以上より、IP-AFSは、より高い骨親和性と力学的強度をもつ骨補填剤として応用可能と考えられた。
|