研究概要 |
骨肉腫は近年の化学療法や手術手技の進歩により,局所コントロールはかなり可能になってきている。したがって,生命予後を左右する因子はほとんど化学療法の感受性と,それに平行して起こる転移の有無であるといえる。骨肉腫細胞は分化の誘導により骨芽細胞と同様の特徴を現すことが知られており,分化の進行をコントロールすることは骨肉腫細胞の転移能に対し影響を与える可能性を持っている。我々は以前の研究にて活性型ビタミンD3が骨肉腫細胞の分化を促し,そこにp53非依存性のp21の働きが関与していることを報告している。今回分化誘導因子である活性型ビタミンD3が骨肉腫細胞におけるCap43の発現を誘導することを明らかにした。また骨肉腫細胞の中で浸潤能の高い細胞のみをクローニングしていくとCap43の発現が低下していくことを発見した。これはCap43が細胞の分化の誘導を介して細胞の浸潤能に影響していることを示唆していると考えられる。また我々はRNA interferenceによりCap43の持続的発現を示す骨肉腫細胞株におけるCap43の発現をブロックすることで細胞の分化に与える影響を確認した。Cap43 siRNAをtransfectionさせるとCap43の発現が著明に低下し,それに伴ない分化のマーカーであるオステオカルシンの発現が減少した。この結果はCap43が骨肉腫細胞において分化の一部をコントロールしている可能性を示唆している。 今回の我々の研究において,Cap43の肉腫における役割が解明されれば, Cap43の抑制もしくは導入による転移の制御という生命予後に直結する分子標的治療法につながる可能性が期待される。
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