研究概要 |
HSV-1のICP4蛋白のアミノ末端に、正常酸素分圧において蛋白分解の目印となるアミノ酸配列であるHIF1αのODD(oxygen-dependent degradation domain)内のユビキチン・プロテアソーム認識部位である564番目のプロリン残基を含む57個のポリペプチドを付加した。さらにそのアミノ末端に23個のアミノ酸からなる核内移行シグナルを付加した。 ウイルスDNAの複製に必須の酵素であるRRをコードする遺伝子(UL39)の5'側2.3kbの配列を含むpKpX2(J.Virol.62,196-205,1988)(Coneticut大学のWeller氏より提供)のStuIサイトにCMV-NLS-ODD-ICP4-IRES-LacZ-polyA断片を挿入し、XhoI消化により線状化し、pUC19配列を除去した11.3kbのUL39-CMV-NLS-ODD-ICP4-IRES-LacZ-polyA-UL39相同組換えベクターを構築した。これをHSV-1変異体ウイルスのDNAとともに、Vero細胞(2.5x10^5/well)にコトランスフェクションし、組換えウイルスHSV-1を単一のプラークとして精製した。 この組換え体HSV-1は、in vitroおよびin vivoにおいて低酸素分圧(02 1%)の条件でより強く増殖し細胞傷害活性を示した。ICP4蛋白は、低酸素分圧(02 1%)の条件でよりよく発現していた。背部皮下に移植したヒト悪性中皮腫、平滑筋肉腫、乳がん細胞への直接注入により。いずれの腫瘍に対して、このHSV-1は顕著な抗腫瘍効果を示した。
|