研究概要 |
関節滑膜線維芽細胞は間葉系幹細胞に由来するが、われわれは滑膜線維芽細胞をbone morphogehetic protein-2などによって刺激することによって軟骨細胞様の形質を獲得することを明らかにした。またこのような軟骨細胞分化は腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor, TNF)-αの刺激によって抑制されることも示した。本年はどのような細胞内情報伝達系を介してTNF-αが滑膜線維芽細胞の軟骨細胞分化を抑制するかを明らかにしていく予定である。P38 mitogen activating proteinkinase(MAPキナーゼ)の阻害剤としてはSB203580、extracellular signal-regulated kinase(ERK)阻害剤としてはPD98059,Jun N-terminal kinase(JNK)阻害剤としてはSP600125、NFkappa B pathwayの阻害にはアデノウイルスによるdominant negative IKK2の遺伝子導入を用いた。PD98059,SP600125,dominant negative IKK2遺伝子導入はTNF-αによる滑膜線維芽細胞の軟骨細胞分化抑制にほとんど影響を及ぼさなかったが、SB203580は低濃度では用量依存性にTNF-αによる滑膜線維芽細胞の軟骨細胞分化抑制を抑制することが明らかになった。以上の結果から、p38 MAPキナーゼ経路は少なくとも部分的にTNF-αによる滑膜線維芽細胞の軟骨細胞分化に関与していると考えられた。
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