研究課題
基盤研究(C)
本研究では、軟骨内骨化において肥大化に強く関与し、骨・軟骨分化を制御していると示唆されている古典的Wntシグナルに着目し、軟骨分化および肥大化制御におけるWntシグナルの役割の解明と、変形性関節症における古典的Wntシグナルの役割解明を目的とした。その結果次のような知見を得た。TCF/LEF-1の構成的活性型変異体の導入によって、軟骨肥大分化マーカー発現が上昇し、抑制型変異体の導入によって軟骨肥大分化マーカー発現が抑制された。さらに軟骨肥大分化の指標として肥大分化マーカーの検出のみでなく、細胞の形態学的変化についても薄切標本を作製し観察した。その結果、肥大分化マーカーの発現上昇と相関して、顕微鏡下で細胞の肥大化が観察された。次に古典的Wntシグナルと他の重要な軟骨分化シグナルであるSox9との相互作用の解析を行ったところ、Sox9ノックアウトES細胞に古典的Wntシグナル刺激しても肥大分化マーカーの上昇はみられなかったことから、Sox9依存性にWntシグナルは肥大分化を促進させていると示唆された。In vitro解析によって、Wntシグナルは軟骨分化・肥大化をともに促進的に調節しており、それはSox9を軟骨の初期分化の段階で介している作用であることを示した。In vivoでは変形性関節症モデルマウスを用い、免疫組織化学で確認したところ、コントロール群に比べて、変形性関節症の発症している部位に一致して、TCF/LEF-1の発現増加が見られた。これは我々のグループが発表したRunx2と変形性関節症との関連と類似する結果であった。Wntシグナルが軟骨肥大化を促進させるということは変形性関節症の病態生理において、発症メカニズムの一部であることが示唆され、原因遺伝子の同定あるいはWntシグナルを制御することで軟骨細胞の肥大化を抑制し、しいては変形性関節症の遺伝子導入による効率的な治療につながると期待される。
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