本年度の研究では先ず濃度勾配コラーゲン円柱を作成した.0.18%、0.24%、0.28%の3種類の濃度勾配コラーゲン円柱を作成し、走査顕微鏡でそのコラーゲンネットワークを観察・比較した.結果、濃度の異なる3種類の濃度勾配コラーゲン円柱は、明らかにコラーゲンネットワークの密度が異なっていた.また、その境界部は明瞭に識別されており、我々の仮定に一致した濃度勾配コラーゲン円柱が作成されたことが確認された. 第二段階では本来、全く修復されない5mm径の軟骨欠損を実験用家禽に作成し、濃度の異なる3種類の濃度勾配コラーゲン円柱を挿入した.挿入後、8週まで定期的に観察したところ0.24%濃度勾配コラーゲン円柱を挿入した群は、組織学的に良好な軟骨を形成していた.組織学的スコアーリングも他の濃度勾配コラーゲン円柱を挿入した群に比べて有為に良好であった. 実験の第三段階では細胞動態マーカーや軟骨機能マーカーを用いた組織化学的手法で、細胞動員や細胞増殖能を評価する予定で、現在進行中である.これまでの細胞動態マーカーの研究では当初の我々の仮説に一致して、濃度勾配コラーゲン円柱の中心部に未分化間葉系細胞が動員されており、軟骨の修復程度に一致して、0.24%濃度勾配コラーゲン円柱で最も良好な細胞動員を認めた. 現在、in vitroでの細胞動員をシミュレートすべく培養細胞でのin vitro濃度勾配未分化間葉系細胞動員システム作成中であるが、未だ有効な濃度勾配の決定には至っていない.
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