研究概要 |
今回の実験では、前回報告した濃度勾配コラーゲンによって軟骨欠損部中央に集められた増殖細胞(骨髄間葉系幹細胞)に対してBMP-2を投与し、効率よく軟骨へ分化誘導させるための至適な投与タイミングを検討する事とした。 日本白色家兎を使用して、大腿骨膝蓋窩に直径5mm、深さ5mmの全層欠損を作成し、前回報告した33%濃度勾配コラーゲンゲル(CG gel)を作成し、全ての膝に移植した。BMP-2をmini osmotic pumpを用いて1週間持続的に1.12μg/週を投与した。以下の4群で実験を行った。1.生食のみの投与群(control)、2.術直後から一週間のみBMP-2を投与し、残りは生食投与の群(BMP0-1)、3.術後1週間目から1週間のみBMP-2を投与し、残りが生食投与の群(BMP1-2)、4.術後2週目から1週間BMP-2を投与し、残りは生食を投与する群(BMP2-3)。術後1,2,3,4,8週で安楽死させ、1,2,3週モデルではBrdU陽性細胞を比較し、4,8週モデルではコラーゲンの免疫組織とトルイジンブルー染色によるスコアリングを行った。 結果はBMP2の初期投与(BMPO-1群)が最も効果があった。1週でのBrdU染色ではBMP-2投与群で欠損中心部に多くのBrdU陽性細胞を認めた。2週ではBMPO-1で辺縁部における陽性細胞が最も少なかった。8週の組織学的評価では、BMPO-1群が有意差をもって良好な結果を示していた。 BMP-2の初期投与は、投与後1週間で欠損部に誘導された骨髄間葉系幹細胞をさらに増殖させ、その後2週目から起こる欠損部での骨髄間葉系幹細胞の骨軟骨分化を増強させる効果がある事が示された。一定期間が経った後に投与しても良好な結果は得られず、BMP-2は、修復初期に投与しなければvitroで言われているような作用は示さなかった。
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