研究概要 |
これまでの研究から老化マウスであるSAMP6の第11番染色体上に、大腿骨骨幹部の骨量を制御する遺伝子(Pdd1)の存在が明らかとなっている。今回、SAMP6と候補遺伝子領域にSAMP2を有する、コンジェニック系統との比較から、.Pbd1が大腿骨骨幹部の骨形態を制御していることを見いだした。さらにこの骨形態の差が、骨強度に影響していることが明らかとなった。マイクロCTによる観察から、骨形態は成長を伴うmodelingの時期に制御されることがわかった。動的骨形態計測の結果から、外骨膜面と内骨膜面の骨形成のスピードの差が骨形態を変化させていることが明らかとなり、この骨形態は成長が止まる4ヶ月齢以降は変化しないことがわかった。Pbd1の検索のため作成したサブコンジエニック系統の解析から、Pbd1が10.OMbpの範囲に存在すること、またPbd1が単一遺伝子であるならばさらに狭い範囲に存在することがわかった。この範囲に同定されている全遺伝子のエクソン配列のSNPを検索したが、SAMP6とSAMP2の間で差が認められなかった。そのため、さらに全遺伝子の発現解析を骨組織と、腎臓において行った所、6個の遺伝子で有意な発現量の差が認められたが、特にCacng4は腎臓において発現量の差が著しく、この遺伝子のみがPbd1が単一遺伝子であると仮定したときの候補領域に位置していた。Cacng4の上流5000bpを検索した所、SAMP6,SAMP2間で異なる、2カ所のSNPが確認された。これまでに骨形態を制御する遺伝子は知られていない。今回の成果は、骨形態を制御する遺伝子の同定に近づく大きなステップであり、今後このSNPが発現量の変化に寄していることを示し、トランスジェニックマウスなどの作成を行うことで、Cacng4の骨形態への影響が明らかとなると考えられる。
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