研究概要 |
1)Foxoファミリー分子の軟骨組織及び軟骨細胞での発現:凍結ヒト関節軟骨組織及び培養ヒト軟骨細胞から抽出したRNAを用いてRT-PCR法によりFoxo1,Foxo3,Foxo4遺伝子の発現を調べた。Foxo1,Foxo3は軟骨組織、軟骨細胞共に発現が見られたが、Foxo4はどちらにも発現が見られなかった。 2)Foxo1遺伝子の発現分布:われわれが樹立したFoxo1遺伝子改変マウス(Foxo1遺伝子座にlacZ遺伝子を挿入している)より作出したヘテロ接合マウス(以下Foxo1lacZ/-マウス)は、成長及び骨格形成において野生型マウスと有意な差は認めない。このマウスの長管骨を摘出してXgal染色し、Foxo1遺伝子の空間的発現分布を調べた。ホールマウント組織染色では、関節軟骨が強く染色され骨組織はほとんど染色されなかった。また凍結切片組織の染色では、軟骨膜直下の未熟で増殖盛んな軟骨細胞が染色された。 3)骨折治癒過程におけるFoxo1の関与:マウス大腿骨骨幹部を人為的に骨折させ、その治癒過程における差異を野生型とFoxo1lacZ/-マウスとで比較した。両者の骨折治癒過程に明らかな差異は見られなかった。今後Foxo3・Foxo4マウスでも同様に調べる予定である。 4)Foxo1分子の新規キナーゼの同定:Foxo分子は種々のキナーゼによりリン酸化される。Foxo1アミノ酸配列を用いたキナーゼ蛋白データベースの検索から、未報告のFoxo1リン酸化蛋白の存在が推測された。この蛋白は予想通りin vitroでFoxo1を直接リン酸化した。この蛋白は過去の報告から神経老化・変性に関与するキナーゼとして知られている。今後この蛋白がFoxo1を介して骨軟骨においても老化変性へ関与するかどうかを調べる予定である。
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