整形外科領域で莫大な患者人口を有する関節リウマチや変形性関節症に罹患した患者関節中では、血管新生がその病態に深くかかわっている。そして、関節軟骨周囲や関節軟骨自身における血管新生制御の破綻が病態悪化の一因であることが明らかとなりつつある。我々は、軟骨組織中に同定されたプラスミノーゲン関連遺伝子タイプB (PRG-B)について、その遺伝子由来の組み換えタンパク質(recombinant plasminogen-related proteon B ; rPRP-B)を大腸菌に発現・精製することに成功し、そのタンパク質が関節軟骨に発現し隣接する滑膜における血管新生を抑制することを明らかにした。そして、PRG-Bが関節リウマチをはじめとする関節炎における血管新生制御の治療標的遺伝子になりうることを明らかにしてきた。本研究では、PRG-Bを治療標的とした関節炎治療の臨床応用をめざして、軟骨代謝におけるPRG-Bの役割を明らかにすることを目的とした。 (1)PRG-B mRNAの関節リウマチ及び変形性関節症関節軟骨における発現解析結果について 関節リウマチ及び変形性関節症の手術時に採取した関節軟骨を材料とし、PRG-B mRNAの発現をin situ hybridization法を用いて検討した。また、採取した臨床材料の病期との関係についても検討を加えた。その結果、より変性の進行した関節軟骨深層でPRG-B mRNAの発現が強く見られた。この所見は、進行した関節リウマチに罹患した患者の関節軟骨でより明瞭に確認された。 (2)PRP-Bの関節リウマチ及び変形性関節症関節軟骨における発現解析結果について 関節リウマチ及び変形性関節症の手術時に採取した関節軟骨を材料とし、PRP-Bの発現をrPRP-Bを用いて作製した抗体を使用して免疫染色により検討した。さらに、PRP-Bの発現と罹患軟骨の病理学的状態ならび病期などについて相関解析を行った。PRG-B mRNAの結果と同様に、PRP-Bの発現も、関節リウマチに罹患した患者の関節軟骨で強く確認された。その病期との相関が示唆された。
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