研究概要 |
(目的)プラスミノーゲン関連遺伝子タイプB(PRGB)を治療標的とした関節炎治療の臨床応用をめざして、軟骨代謝におけるプラスミノーゲン関連遺伝子タイプBの役割を明らかにすることを目的に本研究を行った。 (研究成果)RT-PCRより滑膜細胞にはPRGBの発現は認められなかった。一方軟骨細胞では,発現がわずかに認められ,bFGF(10ng/ml)加えることによりその発現は増強された.In situ hybridizationでは,関節リウマチの関節軟骨で軟骨層radial zoneや,パンヌスの先進部の細胞にもアンチセンスプローブの発色を認めた.リコンビナント蛋白(PRPB)を作製し,関節の主たる構成体である滑膜,軟骨に着目してPRPBの作用を検討したところ、滑膜細胞の増殖には影響を与えなかったが、PRPB添加により,bFGF,IL-1といったサイトカインで刺激された滑膜細胞のVEGFの発現が遺伝子・蛋白の両方において有意に低下することが明らかとなった.次にin vivo実験として、CIAマウスを用いて蛋白の生理活性の評価を行った.蛋白投与後関節炎点数においてPRPB投与群とPBS投与群の2群間の経時点変化に有意差が認められた.関節炎の病理組織学的評価では、PRPB投与群においてはPBS投与群に比較して滑膜増殖と骨,軟骨破壊の所見は少なかった.また,同切片上において抗CD31抗体を用いて免疫染色を行った結果,PRPB投与群ではCD31に染まる血管内皮細胞の数はコントロール群に比較して減少していた.そしてマイクロCTにおいて、コントロール群は足根骨周囲の関節裂隙の狭小化と骨破壊像が認められたのに対し,PRPB投与群ではこれらの所見が軽減されていた.本研究でPRPBが血管新生を阻害し,関節炎を抑制することが確認できたが,その作用機序については不明な点が多く,今後検討すべき点が多い.PRGBはRAといった炎症の生じている関節でサイトカイン刺激によって軟骨にその発現が増強し,さらにその遺伝子産物は滑膜の産生するVEGFの発現を抑制している.VEGFにより生じる血管新生を抑制することによって滑膜の増殖や,軟骨破壊を抑制し,さらに血管内皮細胞自体の働きを抑えることによって、関節内の血管新生を介した滑膜炎を抑制しているのではないかと考えられた.
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