研究概要 |
【はじめに】膝前十字靭帯(以下ACL)再建手術を行って後,安定性良好と思われる例でも,スポーツにおける不安定感を訴える場合がある.術後膝において,未だ完全に生理的な運動の回復はされていないことがその要因と考えられる.この点を明らかにするためのMDCT画像と透視(DR)画像とのimage matchingによりACL再建膝の動作解析を行う方法について検討した. 【方法】3次元画像は,MDCT(Siemens,画素数512×512,スライス厚0.7mm),DR画像はフラットパネルデジタルアンギオグラフィ装置(日立,画素数1024×1024,フレームレート15fps)により,取得した.臨床例に対する応用に先立ち,グラスファイバー製の人工骨を用いて,実験を行った.解析では,MDCT画像から得られた3次元骨モデルを透視投影変換し,擬似透視画像を作成し,これとDR画像との位置合わせをimage matchingの手法を用いて行った.また,ここでの精度に関わる初期位置合わせは,manualでなく,2個のEndoButtonの位置に基づき自動算出できるようにした. 【結果】膝関節屈伸,回旋,内外反の各パラメータについて,解析を行い,擬似透視画像作成の際の値(真値)に対し,上記のimage matchingで算出した計算値がどの程度の誤差を生じているかについて検討した.その結果,各パラメータの誤差は,各々1.3°,5.9°,1.4°であった. 【考察】ACL再建膝においては,過去に報告されている人工関節のモデルと比較し,固定具の形状がランドマークとしては使用し難い.しかし,この手法により解析精度の改善が可能になると考える.今後再建術を施行した症例に対し解析を行い.また健常膝にも応用し,比較することで,より生理的な膝の再建のための術式の検討を行えることが期待される.
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