研究概要 |
平成18年度において,ラットの脊髄虚血モデルが確立され,虚血時間により痙性麻痺と弛緩性麻痺を作成することが可能となった。このモデルを用いて19年度は,運動誘発電位に含まれる高周波成分の分離技術の確立を目指した。最初に,脊髄虚血を行わないラットを用いて,運動野を電気刺激した際に下肢筋群で高周波振動成分が観察されるかどうかの実験をおこなった。この研究においては,下肢筋電図からは高周波成分は検出されなかった。次に脊髄硬膜外腔に電極を挿入して,運動誘発脊髄電位を測定したところ,ここでは,体性感覚誘発電位において体性感覚野から観察されるような,振幅は小さいものの高周波成分が観察された。体性感覚野ではこの高周波成分が抑制系神経活動を反映している事が示されているが,現時点ではこの脊髄電位の高周波振動成分も同様に抑制系活動を反映しているかどうかは明らかではない。また,運動誘発電位にはtrain刺激を用いているため定量的な分析に影響を与えていると考えられることから,今後は単発刺激時の電位を測定して検討する必要がある。脊髄誘発電位を手術中に測定することは,臨床的には困難である。一方で,筋電図では明らかな高周波振動成分を確認することができなかった。今後は,坐骨神経などの末梢神経に誘発される電位を解析対象として研究を進める。平成20年度は,虚血により,運動誘発脊髄電位およびその高周波振動成分がどのような影響を受けるかを明らかにしていく。
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